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中ネタ 2009-2010

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トーストを4万枚焼いた雑誌「暮しの手帖」40年前の号を読む

at 2010.01. 1 Fri 11:00
by 古賀及子


祖母の宝

2010年がやってきた。今年、いよいよ祖母が90歳になる。

あらがえないものは確かにあるようだが、それでもまだまだ大変に元気だ。なんの危なげもなく生活し、たまには一人で日比谷まで宝塚を見に行く。

Sobo
以前同居していた頃はよく記事にも登場してもらった

先日はひ孫につきあって何十年ぶりかに挑んだ縄跳びが1回も跳べないのがショックで練習を開始「やっと10回飛べるようになったわ」といっていた。

そんな祖母の宝が、雑誌「暮しの手帖」だ。

トーストを4万3088枚焼いた雑誌

「暮しの手帖」は戦後すぐに創刊された主婦向けの生活総合雑誌。広告を一切掲載しないことで、ときにはちょっとばっかし過激なんじゃと思えるような消費者視点での編集をしている(歴史の長い雑誌なので、時代時代によってそのさじ加減はずいぶん違うようだ)。

話によると祖母は創刊号から購読しているということで、確かにそれほど広くない祖母宅にはそこかしこにぎゅうぎゅうにいろんな版型の「暮しの手帖」が立ててある。

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壺や泥棒っぽい風呂敷に囲まれて

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謎のペットボトルにつぶされながら

私は3年前まで祖母と10年弱同居していたが、その間も「暮しの手帖」は刊行ごとに本屋さんが配達してきていて、来るたびに読んだり、ほこりっぽくなった祖母のアーカイブも少しずつ読んでいだ。

中で一番衝撃だったのは、1969年に出た号にあった「自動トースターをテストする」だ。

雑誌の名物企画に家電を中心に各社の商品の性能をとことん使って比べる「商品テスト」というものがあるのだが、そのひとつである。

なんとトーストを4万3088枚焼いて調査していたのだ。調査結果よりも、その過程によっぽど驚きだ。

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うずたかくつまれた食パン。モノクロが迫力

以前、調理器具の展示会に行ったときに「トング」の性能を機械で10万回開け閉めして調べるパフォーマンスが展示されていたが、あれを手動でやってるのだ(メーカー各社もやってるのだと思うけど)。すごい。

 

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商品テストの企画は、テストの様子の写真もやけに雰囲気がある
(これは掃除機のテストの企画から)

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こちらもちょっとない風景(換気扇のテストの企画から)

創刊号を探す

今回はそんな「暮しの手帖」の創刊号を読んでみたい。そう思って祖母宅へ向かった。

のだが。

なんと、1967年より前のものはすべて処分されてしまっていた……!
祖母は本当にものを捨てない人なので(マーガリンのパックを洗ってとっておくような人だ)まさかと思ったのだが、生前祖父が邪魔にしていたので思い切って捨てたのだという。私が同居する前の話らしい。全く知らなかった。

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1974年の号には今40歳近い従兄弟の書いた絵が挟まっていた

「私もあれは惜しいことしたと思ってる」

と祖母は心底くやしそうだった。庭のびわの木のびわをカラスにとられたときくらいくやしそうであった。

一番古い所蔵は43年前の

創刊号自体は古本をあたったり図書館に行けば読めるとは思うが、ここは祖母の所有にこだわりたい。

祖母保有の最古の「暮しの手帖」は1967年刊行のものであった。それでも43年前だ。父が21歳と、今の私(30歳)より若いときのものなのだから、そう思うとやっぱりすごい。

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1967年~1969年のもの。左上が最古のものだった
96号は婦人雑誌というものを考え直したくなる本気度

この雑誌は100号を区切りに第1世紀、第2世紀と区分していて(現在は第4世紀を刊行中)、これは第1世紀後期のもののようだ。ちなみに先程写真を載せた「自動トースターをテストする」が掲載されているのが99号、「換気扇をテストする」も92号のものでありました。

油性ペンで書いた布を、10回洗濯していた

では、祖母所有のなかで一番古い91号はどんな記事が掲載されていたかというと、巻頭は練り物の添加物の多さに注意を喚起する記事だった。

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○や×で添加物の多さをジャッジ

のんきな食べ比べではないということは重々理解しつつも、この詳細さとか見せ方のわかりやすさはポップで興奮する。

さらにこちら。

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「サインペンはどれがよいか」より

サインペンの性能を比べるため、布地にいろいろなメーカーのもので書き比べ、さらにそれを10回洗濯してどうなったかをレポートしている。

なにも10回洗濯しなくても、と思うが、実際衣類に書けば10回以上洗濯するわけで、なるほど必要な実験なのだなと思う。

かと思えば、こんな企画でも「比べ」精神が火を吹いている。

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ビーフステーキのいろいろな焼き上げ方

美味しそう! と並行してストイックに機能を発信する冷静さ。なんだろうこの平熱は。

誤解を恐れずいうなら、とい言葉はきっとこういうときこそ使うのだろう、デイリーポータルとかネット上の個人の企画ですといってやっても、意図も伝えることも目的も違うのにそう見えてしまうような気がする。

広告というしがらみのなさがブログだとかのネット文化に近いのだろうか。

とにかく、もう捨てません

昨年くらいから加速して生活まわりのインターネットは情報を「貯め」ずに「流す」時代に来ているらしい。

一方で「貯め」の文化も残ることももちろん間違いないし、そっちの流れだって加速するんですよね。とりあえず、私は今後何があっても祖母の「暮しの手帖」は1冊足りとも捨てられないようにせねばと思いました。あと、ある分は時間をかけてじっくり読みます、ほこりを払って。